マルコフ連鎖モンテカルロ法入門――例からはじめるMCMCの基礎とアルゴリズム
福島孝治・西川宜彦 著、赤穂昭太郎・須山敦志 監修

A5判 256頁 定価 3520円
ISBN 978-4-489-02452-8 C3040
2025年12月刊行
◎MCMCの仕組みや考え方を、しっかり理解できる。
発展的なアルゴリズムや、研究に必須の誤差評価も、丁寧に解説。
マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)の仕組みから実践までを、一歩一歩しっかり理解できる入門書。
MCMC法は、乱数を用いたサンプリングによって高次元の積分を可能にする数値計算手法であり、物理学や統計学をはじめとする幅広い科学の分野で用いられている。
本書は、山登りやグループ分けといった直感的な例から出発し、MCMC法の理論的基礎と具体的なアルゴリズム設計を体系的にまとめる。
さらに、拡張アンサンブル法などの発展的な手法や最近の展開にも触れるほか、MCMC法の結果を正しく理解するための誤差推定の方法も丁寧に取り上げる。
読者が実装しやすいよう各アルゴリズムを疑似コードや図を用いて説明し、実装上の細かな注意点や実際の計算結果も多く掲載した。
著者
福島孝治(ふくしまこうじ)
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻教授
西川宜彦(にしかわよしひこ)
名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻助教
監修者
赤穂昭太郎(あかほしょうたろう)
産業技術総合研究所上級主任研究員、統計数理研究所特任教授
須山敦志(すやまあつし)
アスパイアアナリティクス合同会社CEO
本書の構成と記法について
第0章 例から入ろう
0.1 山登り問題
0.2 クラス分け問題
0.3 どこに難しさがあるのか?
0.3.1 高次元空間を探索することの難しさ–次元の呪い–
0.3.2 局所最適解とフラストレーション–もう一つの難しさ–
0.4 確率分布からのサンプリングという見方
0.5 本書で明らかにしたい疑問
第2章 単純サンプリングからMCMC法へ
2.1 単純サンプリングの考え方
2.1.1 単純サンプリングの一般的定式化
2.1.2 計算機でサンプルを作る例:疑似乱数の生成
2.1.3 サンプリングにより期待値が計算できるわけ
2.2 重点サンプリングの考え方
2.2.1 別の分布からサンプリングしてわかること
2.2.2 マルコフ連鎖を用いたサンプリング
2.3 マルコフ連鎖の一般論
2.3.1 マルコフ連鎖とは
2.3.2 定常分布とつりあい条件
2.3.3 既約性と非周期性
2.3.4 マルコフ連鎖の収束定理
2.4 マルコフ連鎖モンテカルロ法の考え方
2.4.1 サンプル列の生成
2.4.2 Metropolis-Hastingsの方法; MH法
2.4.3 遷移確率と詳細つりあい条件
第3章 MCMC法のアルゴリズム –提案分布の構成–
3.1 ランダムな提案に基づくMH法
3.1.1 離散状態空間での実装例:サイコロ
3.1.2 連続状態空間への拡張
3.1.3 連続状態空間での実装例:2次元混合正規分布
3.2 Gibbsサンプラー
3.2.1 Gibbsサンプラーの基本手続き
3.2.2 Gibbsサンプラーの実装例:グラフ彩色問題
3.2.3 混合正規分布に対するGibbsサンプラーの実装例
3.2.4 制限ボルツマンマシンに対するGibbsサンプラー
3.2.5 Gibbs サンプラーの利点と限界
3.3 Langevinモンテカルロ法
3.3.1 Langevinダイナミクスの導入と離散時間化
3.3.2 Metropolis-Adjusted Langevin アルゴリズム(MALA)の導入
3.3.3 混合正規分布に対するMALAの実装例
3.3.4 高次元分布における一括更新の効果
3.4 Hamiltonianモンテカルロ法
3.4.1 運動量の導入とHamiltonianダイナミクス
3.4.2 Hamiltonianモンテカルロ法(HMC)の導入
3.4.3 混合正規分布に対するHMCの実装例
3.4.4 No-U-Turnサンプラー:NUTS
第4章 MCMC法のアルゴリズム –拡張アンサンブルの方法–
4.1 シミュレーテッド・アニーリングの利点と限界
4.1.1 最適化手法としてのSA とその基本的枠組み
4.1.2 サンプリングとしての課題と分布の補間という視点
4.1.3 クラス分け問題:再考
4.2 テンパリング法
4.2.1 シミュレーテッド・テンパリング法
4.2.2 交換法
4.2.3 交換法の実装例
4.3 マルチカノニカル法
4.3.1 マルチカノニカル分布の導入
4.3.2 マルチカノニカル法のアルゴリズム
4.3.3 マルチカノニカル法の特徴と柔軟性
4.3.4 状態密度の推定
4.3.5 マルチカノニカル法の実装例
第5章 診断と誤差解析
5.1 MCMC法の収束判定
5.1.1 マルコフ連鎖のカップリング
5.1.2 Gelman-Rubin の統計量ˆR による収束診断
5.2 相関がないサンプルの統計的誤差
5.2.1 標準誤差と信頼区間
5.2.2 ブートストラップ法
5.2.3 ブートストラップ法を用いたその他の信頼区間の構成
5.2.4 様々な信頼区間の数値的な比較
5.3 時間的な相関をもつサンプルの統計的誤差
5.3.1 自己相関、漸近分散と有効サンプルサイズ
5.3.2 ブロッキング法
5.3.3 時系列に対するブートストラップ法
5.3.4 時系列に対する統計的誤差の評価法の数値的な比較
第6章 MCMC法の現代的展開:いまなら、ここまで知っておきたいこと
6.1 詳細つりあい条件を破るアルゴリズム
6.1.1 逐次更新による詳細つりあい条件の破れ
6.1.2 Suwa-Todo アルゴリズム
6.1.3 リフティング
6.2 MCMC法で規格化定数を評価する方法
6.2.1 熱力学積分法とその課題
6.2.2 アニールド・インポータンス・サンプリング
6.2.3 ポピュレーション・アニーリング
6.2.4 ネステッド・サンプリング
付録 補足事項
A HMCに関するいくつかの補足
A.1 HMCの手続きが詳細つりあい条件を満たすこと
A.2 運動量の部分更新の詳細つりあい条件
B 時系列に対するブートストラップ法の最適なブロックサイズ選択
C AIS やPAにおける期待値
参考文献
索引
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